ペット・ロス◎悲しみのステップ、ペットの死に遭遇した時の心境とは?
【怒り】『この獣医師がやぶ医者だから死んだんだ!』『もっと早く診断してくれれば治ったんじゃないか!?』『どうしてこんなに苦しんで死なせたんだ』『いつも可愛がってあげなかったからこんなことになってしまった』『不注意で目を離したから事故に遭った。俺が殺したようなものだ』『幸せにしてやれなかった。最低の飼い主だ』とにかく誰かが悪い、誰かのせいでこんなことになったと思い込む、それがこの『怒り』です。怒りの相手は獣医師であったり、家族であったり、自分自身であったりします。獣医師が怒りの的となるのは、死を宣告する張本人だからですし、あなたが動物の命を預けてる人なのですから仕方ありません。獣医師もこのような飼い主の怒りを買うこと、そしてほとんどの場合は、それが時間をおいて癒えていくことを、少なからず経験しているはずです。しかし、これは命を預けられた者として最もつらいことだということも、飼い主の皆さんにおわかりいただければありがたいと思います。私自身も人間の医者として多くの人の死に立ち会ってきましたが、その怒りを、患者さんや患者さんのご家族から向けられたときの気持ちは、生涯忘れることができません。自分に対する怒りは後悔となって残ることがあります。これは長く尾を引くことがあります。後悔があるために、いつまでも『私は二度と動物など飼う資格がない』『あの子のことは誰にも話したくない』と言う人がいます。とても残念なことです。1人でも多くの方に、死に対して後悔を残さないでほしいと思います。私事ですが、私が経験したいくつかのペットの死の中で、後悔に満ちた死と良い思い出になっている死があります。この経験については『後悔のある死、ない死』として章末に書きました。引用/鷲巣月美編『ペットその時あなたは』三省堂新版88~89ページ